書評_「具体⇄抽象トレーニング」

概要

一言で言えば、「具体」が重要視されるこの世界において、「抽象」的思考を行う重要性を説いた一冊。

抽象的思考とは「why」を用いて具体的事例から抽象度を上げること。

例「マグロ」→「魚」

おすすめポイント

抽象的思考を身につけるメリットがわかる

抽象的思考で複数の事例に適用可能な法則や理論といった考え方を身につけることができる。

原因分析で「なぜ」を繰り返せと言われる理由が直感的にわかります。私もなにかやらかして始末書を書く時に「なぜ」で深掘りしなさいと一方的に言われて嫌々作成していたのですが、本書を読むことで抽象化の作業の一貫であるということがわかりました。始末書はゴメンですが、これまでのモヤモヤがなくなり、スッキリしました。

コミュニケーションギャップが生じるしくみがわかる

話が噛み合わない人

抽象度の違いが個々人のコミュニケーションギャップを生み、SNSや職場などで不毛な議論が続いている。

「一般論で話す人」⇄「個別の事象で反論する人」

解消するためにはお互いの立脚する前提条件と抽象度の整理が必要

この点もこれまでのモヤモヤが晴れた素晴らしい解説でした。抽象度が違うことでコミュニケーションが噛み合わないという点、職場で実感しています。全体の話をしているのに個別の議論で反論してくる人間とコミュニケーションを取る際に本書の内容を思い出して対応したい。

抽象的な指示をする上司、具体的指示を待つ部下

上司部下の関係でもコミュニケーションギャップが生まれる

「抽象的な指示の上司」⇄「具体的な指示を待つ部下」

解消するにはどれぐらいの抽象度でパスを受けるかすり合わせが必要。

この点もビジネスマンとして読んでもめちゃくちゃよかったです。上司は部下の成長のためにあえて余白を残した指示をする(サボりたいだけかもしれませんが)

上司の立場からしても、ペンの持ち方まで指示しないと動けない人間よりも、ある程度抽象的な指示をしても自分で情報をとりに行って動いてくれる人間の方が明らかに使いやすいですよね。

部下はその抽象度まで主体的に動いてキャッチアップすることで、上司の期待以上(または以下)の仕事をする。そして成長する仕組みであるということが図解で説明され、腹に落ちました。

主体的というのがポイントで、抽象→具体の流れは川上から川下というように受動的に動きますが、具体→抽象にいくには自分から行動する必要があるということです。確かに個別事象を自分が分析しないことにはそこから学び(抽象的概念)を得ることはできませんからね。

  • 抽象的思考を身につけ抽象度の高いレベルで主体的に動ける人間・・・市場価値が高い
  • 具体的思考に支配され、具体的な指示でしか動けない人間・・・市場価値が低い

わたしも抽象→具体の川の流れを秋ジャケのように遡上しようと思います!!

トレードへの応用

この抽象的思考をトレードにも応用可能だと考えています。

つまり、テクニカルや材料を受けた個別銘柄の動きを「具体」とするならば、それらの共通項を抽出したトレード手法は抽象思考の産物になります。これは正しいサイクルなので続けていきたい。

一方で、個別の事象から法則を見出して、個別のトレードに生かすという抽象化のサイクルを伴わないトレード「裁量トレード」は本書によれば「具体→具体」の事例で場当たり的な対応になります。今後手を出さないようにしたいと思いました。

Φのまとめ

  • 抽象化のメリットとして、「シンプル化」「理論化」「大枠を掴む」力がありそう
  • 抽象思考を学ぶことで、職場やSNSで発生しているコミュニケーションギャップの理由とその対策がわかる
  • 抽象思考はトレード手法の開発やトレーダーとしてのマインドセットにも応用できる

抽象思考を身につけることは世界の見方を変えることに繋がるので超おすすめの書籍でした。

本書におけるピラミッドの図解はあらゆる「抽象」⇄「具体」の関係性を説明できる図解です。素晴らしい発明だと思ったので一見の価値があります。このピラミッドを個人レベルで大きくすることが知の発展とされ、「横軸(具体)」「縦軸(抽象)」の2軸で広がるということ。

「具体」を広げるには経験、観察、ヒアリングなど、「抽象」は仮説思考や原因分析といった手法が良いのかなと個人的に思いました。

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